食洗機も“万能”ではない?(イメージ)
大きな買いものである「家」。それが注文住宅の一戸建てともなればいよいよテンションは上がるが、興奮して余計な設備をつけてしまい、後々後悔するパターンは珍しくないようだ。
なかでもオプションの選択肢が多く、ついつい「あったらいいな……」とつけたくなるのがキッチンまわり。「おしゃれなバーカウンターがほしい」「とにかく収納スペースを多く」など、理想はそれぞれだろうが、それが自分の実生活にフィットするかというと話は別。賃貸なら引っ越せば済むものの、分譲だとそう簡単にはいかない。理想の住まいづくりの参考にすべく、当時は納得のうえで付けたオプションだが、今やすっかり無用の長物と化しているという人たちに、話を聞いた。【前後編の前編】
コロナ禍のストレスが仇となった
コロナ禍中に都内に念願のマイホームを手に入れたMさん(40代/男性)。年収は600万円ほどで、戸建てを買うことなどまったく考えていなかったが、縁が転がり込み、家を建てることになった。仇となったのは、そのタイミングだ。
「妻の実家にあった空きスペースを、『土地は使っていいから、家は自分で建てなさい』という有り難い申し出を受けたんです。当時はコロナ禍で外出できず、ずっと家にいたこともあって、時間はたっぷりある。妻も私も大張り切りで基本プランからあれやこれやとオプションを付けました」
都内に家を買おうとすれば、予算の半分以上は土地代で消える。その分を設備に回せば豪華な家が出来上がるが、それから数年の時が経ち、Mさんは“冷静さを欠いていた”と振り返る。
「とにかく妻がこだわったのがキッチンまわりです。水栓をおしゃれなデザインなものにしたり、カラーリングを追加料金が発生するものにしたり、調理板に人工大理石を使ったりするなかで、バーカウンターもつけました。もともと妻と私はバーの常連同士として出会い、2人ともお酒が大好き。コロナ禍で飲みに行けないストレスがあり、“それなら家で”と、カウンターキッチンの前にバーカウンターをつけたのです。憧れの家飲みでしたが、2~3回で“もういいや”となりました……」
おうちバーカウンターの何がMさんを「もういいや」と思わせたのか。
「実際に使ってみると、自宅なのに横並びで飲むのは違和感が……(笑)。しかもカウンターチェアの向きはリビングとは背中合わせなので、座るとリビングに置いてあるテレビも見えません。さらに、背丈の高いカウンターチェアはフローリングに傷がつくことも分かり、下にマットを引くハメに。今ではそのバーカウンターは、調味料や酒瓶が並ぶ“物置き”と化しています」
