「パソコンの調子が悪い」と連絡が来たものの…(イメージ)
さまざまな手口の特殊詐欺が増えている今、スマホやパソコンの操作に慣れていない高齢者がそのターゲットになりやすい現実がある。高齢の親と離れて暮らす子供のなかには、「親が詐欺にあうのではないか」と心配する人も多いだろう。だが、ネットやパソコンに慣れていない高齢者にとっては、“些細なトラブル”と“重大なトラブル”の見分けがつかないという問題もあり、そこに家族が振り回されるケースもある。
都内に住む会社員のAさん(40代男性)は先日、80代前半の父親からスマホのショートメールに連絡がきた。内容は「最近なんだかパソコンの調子がおかしいから、見てくれないか」というものだったが、Aさんは思わず「詐欺」を警戒したという。
「父は仕事でパソコンを使いこなしていた世代でもなく、スマホもシニア向けの機種を使っています。ネット関連はからっきしダメで、フィッシング詐欺などのカラクリもほとんどわかっていないはずです。パソコンの調子が悪いと連絡がきたときは『何か怪しいメールに引っかかったのでは』と思っていました」(Aさん・以下同)
連絡があった翌日、Aさんは仕事が終わり次第すぐさま神奈川県にある実家に行き、父親のパソコンを確認した。すると、話の真相はまさかのものだった。
「パソコンの画面を見ても特におかしな点はない。父親に何が“変”になったのかを聞いたら『この操作するバーが縦になっちゃったんだよ』と言うんです。調子が悪いというのは、パソコンがウイルスに侵されたとか、個人情報を抜かれたとかではなく、ただ単にウィンドウズのタスクバーの表示が変わってしまったというだけ。何かの操作の誤りで、元に戻すことができなくて『調子が悪い』と騒いでいたわけです」
トラブルが初歩的な設定の問題だったことが判明し、安堵したAさんだったが、父親は“ついで”とばかりにAさんに質問をぶつけてきた。父親いわく、「証券会社からスマホアプリのオンラインサービス登録を促すメールがたくさん届く。やったほうがいいのか」というものだ。
「全部ちゃんと父が口座を持っている証券会社からのものでしたが、父は、いわゆるオンラインサービスというものをまったく利用していないんです。スマホではショートメールとバスの時刻表を確認するくらいですし、ネットショッピングも一切利用していません。そういった父に証券会社のスマホアプリを使いこなせるとは思えないので、やらない方がいいと言いました」