かつて国道16号線と京急空港線は平面交差し、箱根駅伝のランナーが止められる名所としても有名だった。電車通過時は渋滞が発生していたため、現在は立体交差に切り替えられている(2010年1月筆者撮影)
東急と京急の軌間が異なる「鉄道的な障壁」
ただ、蒲蒲線によって蒲田駅から羽田空港まで電車で直通するようになると、蒲田駅は空港への通過駅というポジションが強まり、京急蒲田駅までが通過するだけの存在になる恐れもある。とはいえ、その心配は当分、先のことになりそうだ。それは、東急と京急の軌間が異なる、鉄道的な障壁があるからだ。
鉄道線路は2本レールで一対を成すが、このレールとレールの幅を軌間(ゲージ)と呼ぶ。東急多摩川線の軌間は1067ミリメートルで、京急空港線の軌間は1435ミリメートル。簡単な言い方をすると、線路の幅が異なるため、物理的に東急多摩川線の電車がそのまま京急空港線を走ることはできない。
昨今は異なる軌間でも走れるフリーゲージトレインの開発が進められているが、まだ日本国内では実用化されていない。また、1067ミリメートルでも1435ミリメートルでも対応できるようにレールを3本にする三線軌条という方法もある。
「蒲蒲線の羽田空港への直通は京急空港線を走ることを想定していますが、そのためにフリーゲージトレインを採用するのか、それとも第三軌条にするのか、もしくは新たに設置する京急蒲田駅のホームを対面乗り換えにするといった案も出ていますが、現段階では決まっていません」(大田区鉄道・都市づくり課担当者)
いずれの案を採用するにしても蒲蒲線の実現には相当な年月が必要となることは間違いない。その前の段階といえる、JR・東急蒲田駅と京急蒲田駅の約800メートルをつなげる第1期工事の完了は2040年前後とされている。そもそも羽田空港までの第2期工事は、建設を担当する整備主体や完成目標年すら明確になっていない。不明瞭な第2期工事の区間については、鉄道有識者や鉄道ファンたちから実現を疑問視する声も聞かれる。
そうしたいくつかの懸念はありながらも、蒲蒲線が開通すれば蒲田の街に変化が訪れるのは間違いない。もちろん、長らくせんべろの街として愛されてきた蒲田だけに、再開発で垢抜けてしまったら寂しい、今のままの蒲田でいいと願う区民や来街者も一定数いるが、その雰囲気がすぐに消えることはないと見る。
『月曜から夜ふかし』(日本テレビ系)で蒲田は「飲んだ人が最後に流れ着く飲み屋街の墓場を探してみた件」というテーマで取り上げられ、ちょっとレトロで愛すべき街だが暮らすには勇気がいる、というイメージが広がっていた。だが蒲蒲線の開通によって、新たな魅力が開発され「住みたい街ランキング」上位に「蒲田」が本当に登場する日が来るかもしれない。
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取材・文/小川裕夫(ライター)
