使用を中止している「万博EVバス」(撮影/加藤博人)
大阪・関西万博で独占採用された電気自動車(EV)バスを販売するEVモーターズ・ジャパン(EVMJ、北九州市)が4月14日、民事再生法の適用を申請した。“国産EVバス”を謳いながら中国製の車両を並行輸入してきた同社だが、トラブルが相次ぎ事業は頓挫。事実上の倒産に陥った。本誌・週刊ポストでこの問題を追及してきた自動車生活ジャーナリストの加藤久美子氏が内幕をレポートする。
なぜこの日を選んだのか?
昨年12月にひっそりと早期退職者募集が始まった頃から、EVMJの関係者の間では「倒産の可能性」が囁かれてきたが、ついに現実となる日がやってきたようだ。同社は14日、東京地裁に民事再生法の適用を申請した。しかし、なぜこの日を選んだのか。疑問を抱くのは、万博での導入を決めた最大の取引先である大阪メトロ(大阪市高速電気軌道)が矢面に立たされていた、まさにその日だったからだ。
大阪メトロは、万博期間中のシャトルバスや市内のオンデマンドバスとしてEVMJ社の車両を計190台購入した。しかし、「ハンドルが効かない」といったトラブルが大阪メトロのほか、全国で相次ぎ、国土交通省が立ち入り検査に踏み切る展開に発展した。
そうした事態を受けて大阪メトロは今年3月末、「安全性の確保は困難」として全190台の使用中止を発表。ただ、EVバスの導入には多額の補助金が支出されていたため、大阪市議会との「連絡会議」で大阪メトロの河井英明社長らが14日、一連の経緯や対応についての説明が求められた。大阪市は、民営化した大阪メトロの100%株主である。
大阪メトロはEVMJ社の車両を計190台購入していた(撮影/加藤博人)
支援するスポンサーはいるのか
連絡会議で河井社長は、「190台分の購入代金の返還や車両の引き取りなど求めていたが現時点でEVMJ社からの回答はない」などと説明。「回答によっては提訴も辞さない」との意向を示していた。
その数時間後に、EVMJが民事再生法の適用申請を発表。この対応に憤りを隠さないのが大阪メトロの関係者だ。
「わざわざ民事再生法の手続き開始をこの日に発表したのは、大阪メトロからの提訴をかわすのが目的ではないでしょうか。EVMJのリリースの最後には、今後、スポンサー支援による事業再生を目指すなどと書かれていましたが、今になって手を差し伸べる出資者はいないでしょう」
万博での独占採用をはじめ、これまでEVMJを“重用”してきた大阪メトロの厳しい態度は、経営陣にとって想定外だったようだ。
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【プロフィール】
加藤久美子(かとう・くみこ)/自動車生活ジャーナリスト。山口県下関市生まれ。大学在学中に国産車ディーラーで納車・引き取りのアルバイトに明け暮れ、卒業後、日刊自動車新聞社に入社。1995年からフリーに。『くるまのニュース』『ニューモデルマガジンX』『ベストカー』などの自動車メディアのほか、週刊誌に寄稿。年間約300本の自動車関連記事を執筆している。

