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LIXIL「2つの創業家」問題が突きつける「会社は誰のものか」という問い

潮田氏と対立する伊奈啓一郎・瀬戸欣哉両氏(写真:共同通信社)

潮田氏と対立する伊奈啓一郎・瀬戸欣哉両氏(写真:共同通信社)

 トステムを創業した潮田家とINAXを創業した伊奈家の対立に見えるが、伊奈啓一郎取締役は「創業家同士の争いではない。会社を私物視する経営者の排除が狙いだが、彼らがいなくなればいいというだけではない。会社の仕組みがしっかりしなければ」と訴える。

「株主や従業員に対して、『創業家の意向がこうだからと口を噤むのではなく、自分の思っていることを主張すべきだ』と訴えたい。もし我々が負けたとしても、これはLIXILに限った問題ではなく、日本企業のいろんなところに隠れている問題かもしれないと、人々に知ってもらうだけでもいい」

 LIXILの問題は、日本で企業統治が機能不全を起こしていることを改めて浮き彫りにするとともに、一般株主や従業員などすべての利害関係者に「会社は誰のものか」「企業統治がなぜ重要なのか」という問いを突きつけている。

「樅ノ木は残った」の樅ノ木が、血で血を洗う抗争の末に存続した仙台伊達藩を指すとしたら、LIXIL騒動で樅ノ木のように残るべきは何だろうか。潮田家でも伊奈家でもあるまい。ガバナンスの利いた健全な形で「LIXILは残った」とならねばならないはずだ。

●リポート/山口義正(ジャーナリスト):1967年生まれ。愛知県出身。法政大学法学部卒。日本公社債研究所(現格付投資情報センター)アナリスト、日本経済新聞証券部記者などを経て、現在は経済ジャーナリスト。オリンパスの巨額粉飾事件をスクープし、著書『ザ・粉飾 暗闘オリンパス事件』(講談社+α文庫)にまとめた。

※週刊ポスト2019年6月14日号

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