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「妻とは不仲」と言う上司と不倫した女性 慰謝料請求に応じる必要はあるか

 しかし、相手の婚姻関係がすでに破綻しており、もはや回復の見込みがない状態になっていれば、婚姻共同生活の平和を維持する権利や利益がないのですから、不法行為は成立しません。

 また、性風俗店などで有償で夫と性行為をした女性従業員や、客である夫といわゆる「枕営業」として性行為をしたクラブのママに対する妻からの慰謝料請求について、夫の性的要求を満たす行為であり、婚姻共同生活の平和を害さないか、害したとしても軽微であるという理由で請求が棄却された例もあります。

 娘さんは、上司が結婚していることを知っていたのですから、不貞行為の故意がありました。妻とは不仲だと聞いていたとのことですが、不仲というだけでは、上司の夫婦関係が破綻しているとまでは言えず、慰謝料支払い義務は免れないと思います。

 慰謝料の額は、関係を持つに至った経緯、不貞行為を続けた期間や性交渉の回数、夫婦関係への影響などさまざまな要素で判断されます。上司の家庭が崩壊せず同居を続けていれば、高額にはならないでしょう。

 最近の例を見ると、高級官僚や市議会議員などの特殊な人を除き、一概には言えませんが、数十万から100万円台が大半です。

 上司が人事権や職務上の地位を利用して、関係を求めた事情があれば減額要素になりますが、こうしたことがなければ請求されている100万円は法外な金額とは言えないでしょう。

【プロフィール】
竹下正己(たけした・まさみ)/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。射手座、B型。

※女性セブン2021年8月19・26日号

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