中川淳一郎のビールと仕事がある幸せ

九州人の胃袋つかむ「資さんうどん」やわい麺の魅力 おでん充実で呑兵衛も満足

九州のうどんがなかなか東京に進出できないワケ

 資さんうどんのツユは、ビールにも合うので、時々ビールを飲みながらツユも飲む、といった進め方をし、最終的にはツユまで飲み切ってしまいます。大食いの人はうどんと一緒に「かしわおにぎり(2個)」を食べ、さらにはデザートにぼた餅を食べます。ぼた餅は同店の名物で、持ち帰りをする人もいます。

 東京から来た人は「ウエスト」や「牧のうどん」(いずれも福岡発祥のうどんチェーン)に行くと「なんで九州のうどんチェーンって東京にあんまりないの? コレ、来たら流行るよ!」と言うのですが、うどんの嗜好というものはもう少し根深いものなのではないでしょうか。たとえば関東のうどんは関西でなかなか受け入れられにくい。あの濃いツユの色が関西の人には馴染めないのでしょう。

 それは、九州のうどんが好きな人にとっても同じことが言えるかもしれません。というのも私がいつも行っている資さんうどんの店舗は、元々は某さぬきうどんのチェーン店が入っていたところなのです。やはりあの固さやコシが九州の人にとってはあまりなじめず、そこにコロナ禍も相まって、客足が遠のいたのではないでしょうか。そして「やっぱ九州のうどんじゃなきゃダメだよな」とばかりに資さんうどんが進出。麺は柔らかく、サバやウルメイワシで取ったダシの資さんうどん、休日になると満席になることも多いです。

 こうした九州のうどんの東京大規模進出を期待する人もいるでしょうが、讃岐うどんの固さとコシにようやく慣れた人々からすれば、柔らかい麺の九州のうどんが浸透するのは簡単なことではないだろう、とも思うのでありました。

【プロフィール】
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう):1973年生まれ。ネットニュース編集者、ライター。一橋大学卒業後、大手広告会社に入社。企業のPR業務などに携わり2001年に退社。その後は多くのニュースサイトにネットニュース編集者として関わり、2020年8月をもってセミリタイア。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『縁の切り方』(小学館新書)など。最新刊は『よくも言ってくれたよな』(新潮新書)。

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