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娘に毒親と罵られた60才主婦の告白 子供への過干渉の根底にあるのは「愛ではなくエゴ」

過干渉家庭の子は自信が育まれない

 子供の意思や希望を無視して自分(親)の意見を押しつけ、子供の人生をコントロールすることを過干渉という。精神科医の井上智介さんが言う。

「子供は本来、すべてを肯定される存在です。しかし、過干渉の親と子供との関係は、条件付きなんです。たとえば、親の言う通り、いい成績をとったり、習い事の大会で結果を残すなどしないと愛してもらえません。他者より劣っていると、親から認めてもらえないわけです。そうはいっても完璧な人間などいないわけですから、ちょっと失敗しただけで自信が持てなくなる。自信が持てないと、学校や会社での人間関係はうまくいかなくなります」

 過干渉の背景には、親の不安があるという。

「親は“愛”という建前をかざして、自分の言う通りになる子供をそばにおき、安心したいのです。過干渉の親も自分に自信がなく、世間からどう見られるかばかりを気にしている人が多い。ほかにも、自分の言うことすべてを受け入れてくれる存在が欲しいというケースや、自分の叶えられなかった夢を子供に押しつけることで、自分と子供を重ね合わせて人生をやり直そうとするケースもあります。いずれも根底にあるのは愛ではなく、エゴです」(井上さん・以下同)

 また、過干渉な母の多くは、夫婦仲がうまくいっておらず、孤独を抱えているという。

「専業主婦の場合、社会からも孤立しており、その孤独感を解消するため、子供に過剰にかかわってしまうのです」

 自分が過干渉だと自覚しても、子供へのかかわりをやめると孤独になる。それが耐えられずに再び構ってしまうのだ。そもそも、「子供のため」という大義名分を掲げ、そういった自分の言動に気づかない人も多い。今回のケースも、娘への教育が愛情だと信じて疑っていない点が問題だ。

 ただし必ずしも、“過干渉=悪”ではないという。親が決めたレールに沿って人生を歩むことこそ、幸福だという子供もいるからだ。

 子供が親との関係に疑問を持ち、過剰な庇護下から離れたいと願うならば、親はその意見を認めることが大切だ。

【プロフィール】
井上智介さん/産業医・健診医としても活躍。多くの人に「おおざっぱに笑ってラフに生きてほしい」という思いを込めてブログやツイッターなどでも積極的に情報発信を行う。著書に『子育てで毒親になりそうなとき読んでほしい本』(主婦の友社)など。

取材・文/前川亜紀

※女性セブン2022年8月4日号

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