マンション価格高騰はどう始まったのか(写真:イメージマート)
都心部の不動産価格の高騰が注目を集め、その要因として「海外投資マネーの流入」などがよく指摘されるが、住宅評論家・櫻井幸雄氏は別の仮説を提示する。
外国人の所有よりも「法人名義」の所有が多いことを示す各種調査があること、価格高騰に拍車がかかったのがコロナ禍の2020年であること、そして緊急事態宣言下の2020年4月から中古マンション仲介業者に“売り物がないか”の問い合わせが急増したとする取材証言などから、「コロナ融資」の存在が背景にあったのではないか──。都心マンション価格高騰の要因について、櫻井氏が読み解く。【前後編の後編。前編から読む】
無利子・無担保の貸し付け
2020年4月に緊急事態宣言が出たことで新築分譲マンションを売る不動産会社は販売活動を自粛し、マンション販売センターを一時閉鎖した。一方、中古マンションを扱う仲介業者は、「コロナ禍で資金繰りに困った人がマンションを売りに出すケースがあるかもしれない」と考えて営業を続けていたのだが、売却希望の連絡はなく、むしろ「買いたい」という問い合わせが殺到したとする証言を筆者は取材で得ている。そのことは前編記事で述べたとおりだ。
コロナ禍が起きた2020年4月以降、そんなにお金を持っている人がいたのだろうか。そこで思いつくことが1つある。それは、多くの企業に対して行われた「コロナ融資」の影響だ。
コロナ禍による緊急事態宣言が出た2020年、国や自治体による援助が幅広く行われた。1つは返す必要のない給付金であり、もうひとつは無利子・無担保・無保証の貸し付けだ。
給付金はマンションを購入できるほどの金額ではなかった。これに対し、企業向けの融資は額が大きく、数千万円、もしくは億単位の融資が行われるようになった。
しかも、無利子、無担保で審査も事実上なし、という事例が多かったので、「今はなんとか経営してゆけるが、これから先はどうなるか分からない。その備えとして借りておこう」という企業もあった。
使わなければ、口座に寝かせておき、そのまま毎月返済して行けばよい……そのようなお金が不動産投資に使われた可能性は否定できない。
当時、金融機関にお金を預けても利子はほぼゼロだった。これに対し、不動産、特に東京23区内に立地するマンションは、毎年着実に値上がりしていた。この都心マンションに投資すれば、損をすることはない。むしろ、お金が増える可能性が高い。そう考える法人が、まず中古マンションを物色し、次に販売を再開した新築の都心マンション、なかでも値上がり期待が大きい便利なタワマンを買い始めたのではないか――。
この動きが、マンション高騰の波をつくり出した可能性は十分に考えられる。
