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住まい・不動産
都心の高級マンションの賢い「買い方・売り方」

不動産売却時に知っておきたい「仲介手数料」と「インセンティブ」の仕組み 手数料上限は「売買価格の3%+6万円+消費税」、一見合理的な「成功報酬型」の落とし穴

不動産仲介会社・I-House代表取締役社長・石黒雅規氏

不動産仲介会社・I-House代表取締役社長・石黒雅規氏

不動産業界に残り続けている属人的な構造

 また、担当者がどれだけ誠実であっても、営業現場には会社の売上目標、個人の数字、インセンティブ制度など、さまざまな圧力が存在します。こうした環境のなかで、担当者個人の判断に過度に依存すると、売主の価格最大化と営業現場の効率性が、完全には一致しない場面が生じることがあります。たとえば、早期成約を重視するあまり、十分な検証をしないまま値下げを提案してしまう。あるいは仲介手数料を値引きしているがゆえに、他社経由の買主候補よりも、自社で把握している買主候補を優先しやすくなる。こうした問題は、担当者個人の善悪だけで説明できるものではありません。

 問題の本質は、販売プロセスが同質化しやすくなり、会社としての戦略や仕組みではなく、担当者個人の裁量に依存しやすい構造そのものにあります。こうした営業現場の構造は、不動産業界の内部でも長年、問題意識を持たれてきました。「どの会社に頼むか」ではなく「誰に頼むか」が過度に重視されることは、同時に、会社ごとの個性や強みが育ちにくいことも意味します。

 よくも悪くも、昔ながらの属人的な業界構造が残り続けていること。これも、現在の不動産売却が抱える大きな課題のひとつなのです。

売主の「価格最大化」と不動産会社の「成約効率」とのあいだに生じるズレ

 テクノロジーの進化により、社会の常識がすさまじいスピードで変化している現代にあって、なぜ不動産の販売プロセスは属人性を残したまま、劇的な変化が起こりにくいのでしょうか。その一因となっているのが、不動産業界における「仲介手数料」と「インセンティブ」の仕組みです。

 不動産会社は、売買を成立させた成功報酬として、売買の当事者から仲介手数料を受け取ります。売買価格が400万円を超える不動産売買において、宅地建物取引業者が依頼者の一方から受け取れる仲介手数料の上限は、実務上「売買価格の3%+6万円+消費税」という速算式で計算されます。仮に1億円の物件なら、売主か買主のどちらかから受け取る「片手仲介」で「306万円+消費税」、売主と買主の双方から受け取る「両手仲介」なら「612万円+消費税」が、不動産会社の仲介手数料となります。

 こうした成功報酬型の仕組みは、一見すると合理的です。売れなければ報酬は発生しないため、売主と不動産会社は「売る」という目的を共有できるからです。しかし問題は、その先にある「どのように売るか」という点まで、必ずしも一致しているわけではないことです。

 売主にとっての理想は、できるだけ高く、よい条件で売ることです。一方、不動産会社には、価格最大化だけでなく、成約確度や販売期間を重視する経済的合理性もあります。成功報酬型である以上、同じ時間的リソースを投じるなら、1件でも多く成約したほうが利益につながりやすいからです。

 物件が高く売れれば、不動産会社の受け取る仲介手数料も増えます。しかし、その増加分は、売主が受ける価格差に比べると大きくありません。たとえば、1億円で売れる可能性がある物件を9500万円で売った場合、売却価格の差は500万円です。しかし、不動産会社の片手仲介の報酬差は、その3%にあたる15万円にとどまります。このように、売主にとっては数百万円、数千万円単位の差であっても、不動産会社や営業担当者にとっては、追加で長い時間を投じるほどの経済的メリットになりにくい場合があります。ここに、売主の「価格最大化」と、不動産会社の「成約効率」とのあいだに生じる経済的メリットのズレがあります。

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