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その「鶏のからあげ」は安全か? ブラジル、タイ産鶏肉が欧米で輸入禁止のワケ

輸入鶏肉は7割超がブラジル産、2割超がタイ産

輸入鶏肉は7割超がブラジル産、2割超がタイ産

 家畜に使われる「ラクトパミン」という薬品は、えさに混ぜて与えることで、興奮剤や成長促進剤としての役割を果たし、肉を効率よく大量生産できるようになる。

 その一方で、ラクトパミンは人間が摂取すると、心臓の神経伝達物質に悪影響を及ぼすといわれる。心臓系疾患を持っている人なら大量に摂取すれば心停止を起こす可能性があるため、日本だけでなく、EUやロシア、中国などでも使用が禁止されているほどだ。

「日本に輸入されたブラジル産鶏肉でいえば、2019年2月にサルモネラ菌で汚染されていたという違反事例があったほか、2005年、2011年には合成抗生物質が残留していた事例も見つかっています。大量の鶏を劣悪な環境で飼育しており、鶏の病気を防ぐために、人体に害をなす恐れのある抗生物質などを大量に使っているのです」

 抗生物質が残留した鶏肉は、人間にとって恐ろしい事態を引き起こす可能性がある。米ボストン在住の内科医、大西睦子さんが言う。

「鶏肉に使われる抗生物質は、人間の腸内細菌叢(腸内フローラ)を破壊する可能性が示されています。また、抗生物質を投与された鶏肉は、肥満や糖尿病(1型)、ぜん息、アレルギーなどを引き起こす恐れもあるほか、自閉症、アルツハイマー病、パーキンソン病の発症にも関与していると指摘する研究者もいます」

 さらに、抗生物質を鶏に投与し続けると、薬に強い耐性菌が生まれる。そのいたちごっこで、どんな薬でも殺せない「スーパーバグ」と呼ばれる菌が蔓延し始めており、すでに世界中で年間70万人もの死者を出しているのだ。

「一方、タイ産の鶏肉は、2002年に発がん性が明らかになっている『ニトロフラン』という抗菌剤が残留していた違反が見つかっています。ニトロフランはほとんどの国で飼料への添加が禁止されており、タイ国内でも禁止されていたはずのもの。そのため、世界中が大騒ぎになり、EUはタイ産の鶏肉も輸入を禁じています」(小倉さん・以下同)

2020年8月、ブラジル産冷凍鶏肉から新型コロナウウイルスが検出された(写真/AFLO)

2020年8月、ブラジル産冷凍鶏肉から新型コロナウウイルスが検出された(写真/AFLO)

冷凍鶏肉に付着していた新型コロナウイルス

 ブラジル、タイでは巨大な鶏舎で鶏を“大量生産”しており、その作業には多くの移民労働者を使っている。労働者は人権団体から摘発された例もあるほど劣悪な環境下で働かされており、品質管理が充分であるとはとても考えられない。その結果、ついに昨年、あってはならないことが起きてしまった。

「昨年、中国で、ブラジルから輸入した冷凍鶏肉をサンプル検査したところ、新型コロナウイルスが付着していたのです。劣悪な環境下で飼育・生産しているため、感染している作業員がいることに気づかず、ウイルスの付着を防ぐこともできなかったのでしょう」

 WHOは「食品から新型コロナが感染する証拠はない」としているが、そもそもウイルスが付着すること自体、いかに管理がずさんかを物語っているといえる。一方、中国産の鶏肉は、生のまま日本に入ってくることはないという。鳥インフルエンザが問題になった2004年1月から、日本は中国産の鶏肉の輸入を禁止しているのだ。

「中国産の鶏肉は、生または冷凍の状態で日本に入ってくることはありません。しかし、焼き鳥などの加工品として火を通したものは入ってくる。中国産の鶏肉は、肥育ホルモン剤が使われているともいわれます」

 大西さんによれば、アメリカではこうした危険性のある鶏肉は忌避されており、流通している鶏肉のほぼ100%が米国内産だという。事実、アメリカのケンタッキー・フライド・チキンは2017年から、《人間に有害な抗生物質なしで飼育された鶏肉を提供しています》と宣言している。

「米国産鶏肉にも抗生物質を投与されたものは少なからずありますが、アメリカでは、薬が使われていないオーガニックの鶏肉を選んで食べる人もいます。しかし安全な鶏肉は値段が高く、サイズも小さい。コストなどの問題から、鶏への抗生物質の投与は、継続的には減少していますが、アメリカの抗生物質のうち、80%は畜産農場で使用されているというデータもあります」(大西さん・以下同)

 アメリカ人が食べない抗生物質入りチキンは、どこに行くのか……。ブラジル産、タイ産のものほどではないにしろ、日本に流れ込んできていることは間違いないだろう。

※女性セブン2021年9月9日号

ブラジルの養鶏場。鶏はすし詰め状態で飼育される(Getty Images)

ブラジルの養鶏場。鶏はすし詰め状態で飼育される(Getty Images)

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