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食料品価格高騰の中で“値下げ”に踏み切った餃子店のビジネス戦略

看板メニューの「餃包(4個入り・白湯スープ付)」(写真/坂田さん提供)

看板メニューの「餃包(4個入り・白湯スープ付)」(写真/坂田さん提供)

転機となった卸しビジネス

 坂田さんは、「休業や時短要請中に政府からいただいてきた協力金は、国民の税金が原資なので、値下げすることで少しでも還元するのが筋ではないか」とも語る。もともと会社の体力があったことが、このタイミングでの値下げを可能にした大きな理由だが、そう判断するまでにも様々な工夫をしてきたという。

「コロナ禍の前から、徹底的に効率化を進めてきました。工場の機械化、自動化にはじまり、店舗の発注や在庫、予約、勤怠管理などの業務は全て自動化できるシステムを導入しています。本社の事務所も、もともとあったものを無くして、在宅でも業務が回るようクラウド化し、社員も私ともう1名の役員のほかは全てアルバイトを雇って固定費を抑えています」

 他の業界と比較するとIT化が遅れているとされる飲食業界で、坂田さんの場合はかなり進んでいると言えるだろう。さらに、自社で製造している餃子を他の飲食店にも卸すことで、売上アップの底上げを図ったという。

「ずっと店舗開発に力を入れてきましたが、工場の方も有効活用できないかと思い、2年ほど前から自社で製造した餃子を他の飲食店にも販売し始めました。最初はテスト販売しながらの試行錯誤でしたが、コロナ禍の需要にもマッチして、思いのほか順調に売れていきました。今では、卸しの方が店舗の売上を上回り、卸しの売上だけで11月は1600万円、12月は2000万円に到達する見込みです。将来的には、年商で5億~10億くらいまでには持っていきたいですね」

 コロナ禍の不況もどこ吹く風の好調さだ。もし飲食店経営だけのビジネスなら、ここまで大きな規模には成長しておらず、今回の値下げも実施していなかったかもしれない。何が起きても倒れないための事前の準備と企業努力の大切さを、坂田さんは身を持って証明していた。

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