かなりきれいに使用していたのに…(イラスト/大野文彰)
賃貸物件を退去する際には、何かとトラブルが発生しやすい。敷金を巡って揉めるケースは非常に多い。たとえば、大家による「原状回復のために敷金を使う」と主張に、賃借人が納得できないこともあるだろう。このような場合、賃借人は敷金の返還を求めることができるのか。実際の相談に回答する形で、竹下正己弁護士が解説する。
【相談】
賃貸マンションを退去しましたが、大家さんが敷金を返してくれません。問い合わせても、「原状回復するので敷金は返せない」の一点張りです。私が住んでいたのは2年ほどで、傷や汚れはつけていません。かなりきれいに使用していたのに、敷金がまったく返ってこないのは納得できません。大家さんにどのように対処したらよいですか。(39才・女性・会社員)
【回答】
賃貸借が終了したときに賃借人が負う原状回復義務について、民法では「賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う」と定めています。
条文中のカッコ内が重要で「経年変化を除く」と明記されています。すなわち、通常の使用で発生する損耗に関して賃借人に修繕義務がないとされているのです。通常損耗分は減価償却として家賃にもともと含まれているはずで、修繕費を支払うと二重払いになって不当という考えです。ですので、大家の言い分は筋が通りません。
もっとも民法の定めとは別の合意が可能ですから、通常損耗を修繕義務の対象にする賃貸借契約も可能です。しかし、契約したからといって、賃借人に通常損耗にまで修繕義務を負わせるのは予想外の特別な負担になります。
