最高裁は「賃借人が補修義務を負う損耗の範囲が契約書の条項に具体的に明記されていたり、口頭で説明されて、賃借人がそのことを明確に認識し、負担することを合意の内容とした場合」にのみ通常損耗の修繕義務を負うとしています。
この事例では、賃貸借契約書に退去時の修繕費について賃貸人と賃借人の分担表が添付されていましたが、補修を要する基準を「汚れ」「生活による変色」などと定める程度であったので、通常損耗を含むか一義的に明白ではないとして、賃借人の通常損耗の修繕義務を否定しました。
あなたの賃貸借契約上で、「退去時には劣化汚損の原因を問わず原状回復費用を負担する」といった記載があったり、その説明を受けていなければ、通常損耗の修繕義務を負う合意がないので、大家は修繕費を敷金から差し引くことができません。
この理屈を説明しても理解を得られない場合は、最寄りの簡易裁判所で少額訴訟の裁判を提起するか、支払督促の手続きをとるしかありませんが、大家にその旨を文書で警告すれば面倒がって交渉に応じるかもしれません。
【プロフィール】
竹下正己/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。射手座・B型。
※女性セブン2026年3月5日号