皇居周辺の高級住宅地には、マンション価格だけでは測れない歴史や格式に裏打ちされた価値があるという(写真:イメージマート)
高騰を続けてきた東京の中古マンション市場に、変化の兆しが見え始めている。不動産調査会社・東京カンテイが発表した9月の中古マンション価格(70平米換算)によると、東京23区は前月比0.4%下落の1億2629万円と、4か月連続で値を下げた。一方、東京都全体(市部を含む)は同0.2%上昇の1億1299万円と2か月ぶりに上昇した。地域によって値動きが分かれるなか、改めて注目したいのがマンションの価格だけでは測れない住宅地そのものの“価値”だ。
東京都内には“高級住宅地”と呼ばれるエリアがいくつかある。明確な定義があるわけではないが、一般的には、良好な住環境と高い資産価値が長年にわたって維持されている地域を指す。具体的な条件としては、水害リスクが比較的低い高台に位置し、敷地にゆとりがあって建物が密集していないことや、江戸時代に大名や旗本の武家屋敷が集まっていたような由緒ある場所であることなどが挙げられる。マンション価格は市場で決まるため、必ずしも最も高額な地域とは限らないが、歴史や住環境などの面で別格と見なされている場所だ。では、東京都内でも屈指の高級住宅地と呼べるエリアはどこか。
「やはり千代田区の番町でしょう」
そう答えるのは、『東京23区中古マンション格差の地図帳』(宝島社)の監修者で、不動産ジャーナリストの榊淳司氏である。番町は良好な住環境と由緒を兼ね備えた住宅地だが、その成り立ちには他の高級住宅地とは異なる特徴があるという。
怪談「番町皿屋敷」に残る徳川直参の面影
「番町を舞台にした有名な怪談に『番町皿屋敷』があります。この怪談には時代や書き手によってさまざまなバリエーションがあり、お菊が割った皿は、将軍から拝領した葵の紋入りの皿だったという話もあります。そこからも、皿の持ち主が徳川将軍家と深いつながりを持つ旗本だったことがうかがえます」(以下、「」内コメントは榊氏)
旗本とは、将軍に直接拝謁できる「御目見(おめみえ)」以上の格式を持つ、石高1万石未満の家臣を指す。幕府の行政事務を担う「役方」と、軍事・警備を担う「番方」に大別された。
「番町」の格式を生み出したのは…
【プロフィール】
榊淳司(さかき・あつし)/1962年、京都市生まれ。榊マンション市場研究所主宰、不動産ジャーナリスト。年間500か所以上、新築マンションの建築現場を現地調査する。『東京23区中古マンション格差の地図帳』(宝島社)を監修したほか著書も多数。
取材・文/清水典之
