中川淳一郎のビールと仕事がある幸せ

独立起業したがうまくいかない友人から借金の依頼をされる寂しさ

対等な人間関係が壊れ上下関係が生まれる

 広告代理店の営業出身の彼は、「装置」に手を出さなくても良かったのでは、とも伝えました。広告代理店出身者は、あくまでも自らの脳味噌と、ツテを使い商売をするのが無難です。むしろ「装置」を持っている会社の営業代行をする、という方が彼の能力は活かせたのではないかと思いました。技術者でもクリエーターでもないのですから、新たに開発する必要はなかったのです。

 また、今回痛感したのは、独立する際の円満退社の重要性です。どうも古巣との関係がよろしくない辞め方をしてしまったため、古巣からの仕事はもらえない状況のようです。当然その古巣がかかわっていたクライアントも彼と仕事をするのに及び腰になってしまう。独立したい方にはくれぐれも円満退社をお勧めします。

 さて、かくして「出資」は拒否したのですが、彼にはこう助言しました。

「こうなったらどこかの広告代理店に転職する、というのが、あなたが生き残っていくための現実的な選択肢かもしれません。今までのキャリアを見たら、歓迎してくれるところはあるのでは。現在持っているサイトとかアプリについては、維持する。そして、今も顧客はついているわけだから、そこは副業としてやりつつ、必要とあらば信用できるフリーランスの友人に適宜手伝ってもらい、運用を継続する。客が離れたらそれはそれで仕方がないとする。そのうえで、新たに入った会社でその装置を使ったサービスをクライアントに提案し、売上を会社と折半する形にすればいいんじゃないですか?」

 今回の「出資」の件で残念なのが、恐らく彼は、今後私に会いづらくなってしまっただろう、ということです。私は会いたいと思うのですが、借金を依頼すると途端にこれまでの対等な関係がぶっ壊れ、上下関係が生まれてしまいます。決してそんな関係を私は求めていません。しかし、我々の間には妙なしこりが残ってしまったのです。

 借金は、大事な人であればあるほどお願いしてはいけない――改めてそう思いました。

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