中川淳一郎のビールと仕事がある幸せ

コロナ休業であらためて考える飲食店にとっての「家賃」の重さ

 普段通りの営業ができるようになった後は、毎月の儲けから数万円を大家に支払うようにして、猶予期間分で機関や行政が補填した以外のものはキチンと返済する、という枠組みはいかがでしょうか。当然、これまで家賃滞納をしたことがないような信用ある店子限定の措置となるでしょうが、こうした制度があれば救われる飲食店は数多いと思います。

借金依頼の理由は決まって…

 さて、冒頭の説明で私は170万円を貸し、20万円を渡した、とありますが、こうした経験をしたことで、飲食店と家賃について、いろいろと考えるようになりました。合わせて190万円。これって、車を1台買えますし、私が通っていた時代の大学の入学金も含めた4年分の学費に相当する大金です。当時(1993年入学)の国立大学は入学金20万円、授業料は年間40万円の合計180万円でした。

 それだけこの190万円という金額は大きなものだと強調しておきます。

 私が常連として通っていた東京・渋谷のスナックに初めて行ったのは2001年、27歳の時でした。以後、月に最低5回、多い時は15回ほど行っていました。渋谷で飲んだ後、2次会ないしは3次会で行き、朝の3時ぐらいまで酒を飲んでいたのです。

 同店は常連の空気を乱さないために「一見禁止」を掲げていたのですが、常連の高齢化が進んだことで、2010年代に入ると客の数もめっきり減ってきました。2010年、37歳だった私が同店の常連の最年少といった状況になったのですが、2014年頃からママに借金を依頼されるようになりました。

 その金額は「50万円」か「70万円」でした。50万円を2回、70万円を1回頼まれ、ある時は経営が苦しそうだったので2500円の飲み代に対して20万円を出したこともありました。

借金依頼の理由は決まって、「家賃を○日までに払わないと追い出される」というものでした。その店は渋谷駅からほど近い好立地にありました。L字型のカウンターとソファー席があり、恐らくは24平方メートルほどでしょう。私としても、渋谷でゆったりと寛げる「居場所」がなくなるのは寂しいため、店の存続のためにお金を貸すことにしたのです。

 誤解をしないでいただきたいのは、ママに対して下心があったとかそういうことではありません。初めて彼女とお会いした時、彼女は65歳ぐらいで「私はあなたの東京の母よ」みたいに言っていました。今はもう80歳を超えていることでしょう。

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