田代尚機のチャイナ・リサーチ

北京五輪でデジタル人民元の利用実験、ドル覇権に挑戦する中国の思惑

 中国ではアリババの支付宝、テンセントの微信支付といった2大オンライン決済プラットフォームが広く普及している。本格的に普及し始めてからすでに10年近い年月が経っている。現在のデジタル人民元は電子マネーとして使われているが、長年のこの大手2社の経験が生かされており、今のところ法定通貨化への障害はなさそうだ。

 とはいえ、法定通貨となれば、偽造されないこと、簡単に盗まれないことなどに対する要求水準は格段に高まる。また、今後、さらに大きな頻度で利用されることになる。

 中国人民銀行は、法定通貨化を急がず、テスト地域を段階的に拡大させ、最後にはそれを全国、海外に広げるといった形で、慎重に普及を進めるのではないかとみている。

SWIFTネットワークを使わざるを得ないリスク

 2020年における中国の名目GDPは米国を100とすると70.5に過ぎないが、製造業では169.6と米国を大きく超えている(IMF統計より)。また、貿易面では、2020年におけるアメリカの輸入を100とすれば中国は85.4だが、輸出は180.9である。全体の貿易金額では121.1となり、中国は世界最大の貿易大国となっている(UNCTAD統計より)。

 このように、モノの国際間取引では世界最大を誇る中国だが、依然として、米国に大きく劣る点が一つある。それは取引に使用される通貨が未だにドルが中心となっている点だ。

 銀行間の送金、決済に利用されるネットワークについては、SWIFT(ベルギーの本部を置く非営利団体:世界銀行間金融通信協会)がほぼ独占している。

 SWIFTの送金、決済システムを利用するために、人民元による取引であっても、人民元を一度ドルに転換し、相手方で人民元に転換するような取引も行われているようだ。

 このSWIFTは米国の金融機関の影響力が非常に強い。米バイデン大統領は1月19日、ロシアがウクライナに進行すれば、ロシアの金融機関をSWIFTから外すと発言したが、このようにSWIFTは、米国が他国を制裁しようとする際、強力な武器として使われている。

 米中関係が緊迫する中、SWIFTのネットワークを使わざるを得ない状況こそが、中国にとって大きなリスクでもあるだろう。

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