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「生ジョッキ缶」「ビアリー」… 若年層への訴求力を強めるアサヒビールの戦略

グローバル化を牽引してきた(ニュージーランドの新オフィス開きに出席した勝木氏)

グローバル化を牽引してきた(ニュージーランドの新オフィス開きに出席した勝木氏)

──アサヒにはシェア1位のノンアルコールビール「ドライゼロ」もあるが、どう差別化を?

勝木:ノンアルコールビールなど従来のノンアル商品は、味も含めて“ビールの代替物”という消極的なイメージが強かったですが、「ビアリー」は違います。

 ホップなど100%ビール由来の原料を使用して、香り豊かでコク深いビールを醸造した後、香りや味はそのままにアルコール分だけを抜き取る「脱アルコール製法」という蒸留技術を用いている。それが本物のビールに劣らないクオリティを実現しました。

 また、この商品の開発には、WHO(世界保健機関)が掲げる「不適切飲酒の撲滅」に貢献していこうというテーマも込められています。

 お酒は日々の暮らしに喜びと潤いをもたらすものですが、その一方で過剰な飲酒が健康や社会生活に悪影響を及ぼすことも事実です。「ビアリー」など微アル製品の販売シェアを増やすことは、世界的な潮流にも合致していると考えています。

──今後のアサヒの戦略は?

勝木:34年前に「スーパードライ」が大ヒットしたのは、スッキリとしてキレがある辛口の味わいが若年層に受け入れられたからです。

 しかし、当時の若者も現在は60歳以上の年齢になっている。そうした「スーパードライ」のボリューム層の方々に合わせた従来のマーケティングや販促だけではいけないと考えています。

 今後は、若い方々への訴求力をより強めます。「スーパードライ 生ジョッキ缶」や、「ビアリー」、アルコール度数を4%に下げた「ドライ ザ・クール」などは、若い人たちにもアサヒビールの良さを知っていただくためのご提案です。この流れをさらに加速していきたいですね。

【プロフィール】
勝木敦志(かつき・あつし)/1960年、北海道生まれ。青山学院大学経営学部卒業後、1984年ニッカウヰスキー入社。2002年アサヒビール(現・アサヒグループHD)に転籍。2006年国際経営企画部長。2014年に豪社のCEO(最高経営責任者)に就任。2017年にアサヒグループHD取締役兼執行役員、2020年に同専務取締役兼専務執行役員兼CFO(最高財務責任者)。2021年3月より同社長兼CEO。

【聞き手】
河野圭祐(かわの・けいすけ)/1963年、静岡県生まれ。経済誌編集長を経て、2018年4月よりフリーとして活動。流通、食品、ホテル、不動産など幅広く取材。

※週刊ポスト2021年8月20日号

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