真壁昭夫 行動経済学で読み解く金融市場の今

日本の物価上昇を加速させる3要因「エネルギー」「食料」「円安」の行方

 そして「円安」。米国のバイデン政権にとっても物価高対策は急務であり、FRBがさらなる利上げに踏み込むことは必至の情勢。対照的に、日銀は利上げできない“呪縛”にとらわれたままで、日米金利差の拡大が続くことから、まだまだ円安傾向は続く見通しだ。

 ただ、1ドル=140円を超えてくるような「行きすぎた円安」は日米ともに避けたいところではないだろうか。実際、7月12日に来日したイエレン米財務長官は鈴木俊一財務相との会合で為替介入を認める発言こそしなかったが、「為替問題で適切に協力する」と共同声明を出している。

 とはいえ、いま世界を覆うインフレは、心理学的に考えるともはや「コントロールの欠如」に陥っている。「コロナ禍」に「ウクライナ危機」と次々に見舞われるなかで、環境の変化に十分な対応ができないコントロール不能状態にあるのだ。

 現在、世界を取り巻く危機的状況は、「コロナ禍」に「ウクライナ情勢」、「中国経済の減速」などと“変数”がいくつも絡み合っている。しかも、それらは足し算ではなく、「かけ算」となっているため、単に引くだけでなく割り戻していくことが必要となる。なるべく迅速に最適な「解」を求めるのは、非常に難しい状況である。

 私たちも、まだまだ値上げラッシュが続くと認識したうえで、生活にひと工夫もふた工夫も求められることを覚悟した方がいいかもしれない。

【プロフィール】
真壁昭夫(まかべ・あきお)/1953年神奈川県生まれ。多摩大学特別招聘教授。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリルリンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員、信州大学教授、法政大学大学院教授などを経て、2022年4月から現職。「行動経済学会」創設メンバー。脳科学者・中野信子氏との共著『脳のアクセルとブレーキの取扱説明書 脳科学と行動経済学が導く「上品」な成功戦略』など著書多数。近著に『ゲームチェンジ日本』(MdN新書)。

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