マンション市場が転換期を迎えるなか、転売制限の実効性や購入者の権利への影響が問われている(写真:イメージマート)
不動産調査会社・東京カンテイによると、2026年9月の東京23区の中古マンション価格(70平米換算)は前月比0.4%下落の1億2629万円となり、4か月連続で値を下げた。東京23区の中古マンション市場で価格調整の動きがみられるなか、千代田区は10月27日、新築マンションの開発事業者に対し、購入者への引き渡し後、原則5年間の転売を禁止する特約を設けるよう要請した。対象は三菱地所レジデンスが関わる建て替え事業と日本経済新聞は報じている。
区の住宅課は対象物件の詳細について、「事業者名も具体的な物件名も公表していません。今のところ1件のみで、今後、条件に合う案件が出てくれば、同じように要請することになります」と答えた。ただし、要請の対象は、東京都の都市開発諸制度を活用して容積率の緩和を受けた事業などに限られるという。都市開発諸制度とは、敷地内に一般の人も利用できる広場や通路などを設けるといった公共的な貢献を条件に、容積率などの建築規制を緩和する仕組みだ。
投機的な取引を抑え、価格高騰に歯止めをかけることを狙った異例の要請だが、実効性はあるのか。専門家に見解を聞いた。
カギは“容積率の緩和”
今回の千代田区の要請について、『東京23区中古マンション格差の地図帳』(宝島社)の監修者で、不動産ジャーナリストの榊淳司氏はこう語る。
「あくまで要請であって、法律や条例で定めているわけではないので、従うかどうかはデベロッパー次第です。だから、“容積率の緩和”を盾にとって、従わせようとしているのでしょう」
榊氏の見方では、容積率の緩和が、区にとって事業者に協力を求める際の“伝家の宝刀”になっているわけだ。では、今回の施策によって、投機目的の購入や短期転売を抑えることはできるのか。
「やるなら3年前だった」
「これまでは中古マンション価格が上昇し続けていたので、不動産業界で“バルク屋”と呼ばれている不動産仲介業者が複数戸をまとめて購入して、値上がりを待って売却して利益を得てきました。不動産仲介業は、売り手と買い手の双方からそれぞれ3%程度の手数料を受け取る場合がありますが、自社で買って売った方がはるかに儲かったんですね。ところが、東京の中古マンション市場はすでに調整期に入って価格の下落が始まっています。“バルク屋”も手持ちの物件を売り払っているところで、新たに買うどころではない。短期的な転売目的で購入しても、値下がりして損をするだけです。やるならバブルまっただ中の3年前にやるべきだったと考えます」
榊氏は、すでに短期転売で利益を得ることが難しい市況に変わりつつあるとみており、今回の対策は“時すでに遅し”だと指摘する。また、転売制限の効果だけでなく、購入者の権利への影響についても懸念を示す。
規制に対する懸念は…
【プロフィール】
榊淳司(さかき・あつし)/1962年、京都市生まれ。榊マンション市場研究所主宰、不動産ジャーナリスト。年間500か所以上、新築マンションの建築現場を現地調査する。『東京23区中古マンション格差の地図帳』(宝島社)を監修したほか著書も多数。
取材・文/清水典之
